The previous night of the world revolution4~I.D.~

…牢屋に入れられて、まだ一分もたってないんだけど。

…脱獄?

「脱獄って…。もう?」

「何だ。ルルシー先輩はもう少し囚人ライフを楽しんでいきたいのか?」

「いや…囚人ライフ楽しむ趣味はないけど…」

俺、今めちゃくちゃ感傷に浸ってたところなんだけど。

ここからしばらく俺の悲痛な胸のうちを語る…つもりだったのだが?

「煮られるのか焼かれるのかは知らないが、取り返しがつかなくなる前に、早いところ逃げた方が得策だと思うんだが」

「逃げるって言っても…どうやって?今度は手錠も簡単には外せないぞ」

今回の手錠には、超小型の爆弾がつけられている。

この前みたいに強引に外したら、爆発して両腕が吹き飛ぶだろう。

「大丈夫だ。こんなときこそ、俺の秘密道具の出番だ」

…秘密道具?

道具も何も、持ってきた武器はさっきのボディチェックで全部取り上げられただろう。

と、思ったら。

ルリシヤは手錠を嵌められた手を器用に動かし、口の中に手を入れた。

は?

そして、口の中から、百円均一で売ってる小さなソーイングセットみたいなものを取り出した。

何だ…あれ。

口の中に何を仕込んでたんだ。

「ルルシー先輩、そんなにじろじろ見ないでくれ。恥ずかしいじゃないか。一応口の中に入れてたものだし」

何ちょっと恥じてんの?

「いや…お前、何?それ…」

「『これであなたも脱獄上手!ルリシヤ特製・脱獄七つ道具』だ」

…。

そんなものを口の中に仕込んでたのか。

「口の中の何処に…そんなもの…」

「え?舌の下」

もう器用とかそういう次元の話じゃないよ。

「これがあれば、どんな監獄からも脱獄出来るぞ」

「でも…爆弾つきの手錠を、どうやって?」

針やクリップで鍵穴探るだけじゃ、この手錠は外せないぞ。

しかし、ルリシヤは余裕の表情だった。

「大丈夫だ。このタイプの手錠はな、物理的な衝撃にはめっぽう強い。だが、それ以外の衝撃には驚くほど弱かったりするんだ。だからな?」

ルリシヤは口の中に隠していたソーイングセット…ならぬ、脱獄七つ道具を収納しているちっこい小箱を、こつん、と自分の手錠に当て。

ポチっ、とボタンを押した。

途端。

バチンッ、と弾けるような音がした。

そして、次の瞬間には…手錠は、使い物にならなくなっていた。

間抜けにも小さな白煙を上げて沈黙した手錠を、ルリシヤは容易く外してみせた。

「お前…それ…」

「ちょっと電気を流してやると、意外にあっさり起爆装置が死ぬんだ。そうなればもう普通の手錠と同じだからな。簡単に外せる」

…そういうことか。

あの箱、超小型のスタンガンだったのか…。小賢しい手のようにも見えるが、こういうときはぶっ刺さりだな。

「ほら、ルルシー先輩も。ちょっとビリっとするかもしれないが我慢してくれ」

「あぁ」

俺の手錠にスタンガンを当て、バチンッ、と一発。

確かに少しビリっとしたが、これで手錠は外れた。

「よし。あとは出るだけだな」

「でも…牢屋の南京錠は」

「これのことか?」

ルリシヤは、あっさりと外された南京錠をぷらん、と掲げて見せた。

鍵穴にクリップを突っ込んだかと思うと、秒で解除しやがった。

爆薬も仕掛けられていない錠なんて、ルリシヤにとっては障害にもならないらしい。

この男を閉じ込めておこうと思ったら、もう全身を拘束して、磔にでもしておかなければならないんじゃないか?

それでもこいつなら、何とかして脱出してしまいそうだから怖い。