The previous night of the world revolution4~I.D.~

恥も外聞も捨て去った姿で、俺とルリシヤはヘールシュミット邸に潜入した。

モップとバケツを持ち、さながらお掃除のメイドさんという風を装って。

「良いか、ルルシー先輩。くれぐれも堂々としているんだぞ。堂々としていることが、一番の変装だと思え」

と、ルリシヤが言うので。

俺は、出来るだけ堂々と歩いた。

こんな格好で堂々と歩くのは、なかなかに抵抗があるが。

今ここでバレる訳にはいかないので、俺は自分をメイドだと思い込むことにした。

そして、二人でルレイア探しだ。

二手に分かれた方が効率的に思えるが、俺達は二人しかいない訳で、もし片方がルレイアを見つけたとしても、もう一人がはぐれてしまっていたら、慌てて探し回らなければならないことになる。

俺達は奇襲作戦を仕掛けに来たのだ。さっさと拐って、さっさと去る。

その為には、二人で行動した方が都合が良かった。

しかし。

「うーん…。なかなか見つからないな」

「そうだな…」

ヘールシュミット邸は、控えめに言って大豪邸だ。

一周ぐるりと回るだけでも、かなりの時間がかかる。

この大豪邸の中でルレイアを探すのは、なかなか至難の業だ。

「そもそも…ルレイア先輩を見つけたとして、連れ出せる状態であれば良いが」

「…連れ出せる状態?」

「例えば、前みたいに…洗脳のせいでへろへろになっていたら…」

「そのときは、俺が抱えて逃げる」

「さすが白馬の王子様だな」

白馬の王子様と言うか、白トラックに乗って、メイド服を着た王子様だけどな。

まぁ、格好なんて今は問題ではない。

ルレイアを助け出すこと以外はどうでも良い。

格好を気にするのは、作戦が終わってからだ。

「もし隠し部屋に軟禁でもされていたら、探しようがないな…」

…その可能性は、充分にあると思う。

その場合は…どうやって探し出せば良いのだろう。

「あっ、ヤバい、ルルシー先輩」

「あ?何?」

「右前方から人の気配。お掃除モードに移行だ」

「お、お掃除モード?」

何だそれ?今は何モード?

「掃除をしている振りをするんだ。良いか、心も身体も廊下も、ぴかぴかにするつもりでな」

「わ…分かった」

このモップはただの小道具ではないというところを、見せてやるときだ。

右前方からやって来たのは、俺達掃除婦ではなく、洗濯が担当の洗濯婦。

俺は何気ない風を装って、廊下をモップでごしごし。

ルリシヤも何食わぬ顔をして、これが本職ですが何か?と言わんばかりにモップを動かしていた。

堂々としているのが一番の変装、とはよく言ったもの。

洗濯婦は俺達を気に留めることもなく、すたすたと歩き去っていった。