「まず、次の火曜日の早朝に、この作業服を着て、委託業者の本拠地に向かう。で、それぞれ段ボール箱に隠れて、ヘールシュミット邸に運ぶ食料に紛れ込む」

「…それで輸送してもらう訳だな?」

「その通り。これが、俺達の乗る白馬ってことだ」

段ボールと運送トラックが白馬かよ。

王子も大変だな。

「そして、そのままヘールシュミット邸に向かい、荷下ろしが始まったら、隙を突いて段ボール箱から抜け出して、業者の職員を装って、ヘールシュミット邸に潜入する」

「…バレないのか?それ」

いくら作業服を着てたってさ。

お前本当に業者の人間か?と聞かれたらどうするんだ。

「大丈夫だ。念の為に、この業者の社員証と、入場許可証をスッておくから」

ルリシヤ、お前本ッ当そういうところは抜かりないよな。

「で、あとは業者の振りをして屋敷の中を探すのか?」

「残念ながらそれは無理だ。そもそも、俺達は食料運送業者に成り済ますんだぞ?食料運ぶ人間が、屋敷の中をうろうろしてたらおかしいだろう」

…確かに。

精々、トラックと厨房…あるいは食料貯蔵室を行き来するくらい。

それ以外の場所をうろうろしてたら、お前らこんなところで何をしてる?って聞かれるよな。

「だから、次に必要になるのがこれだ」

ルリシヤは、改めて先程のカツラと。

そしてもう一つ。

…真っ白なエプロンのついたメイド服を、見せてきた。

…うん。

「…ルリシヤ、これ何?」

「知らないのかルルシー先輩。メイド服だ」

「…そうか」

俺も、もしかしたらそうじゃないかな~と思ってたところだ。

本当にそうだったか。

「…一応聞こうか。これをどうするつもりだ?」

「着るんだ」

…うん。

「…何が嬉しくて?」

「別にコスプレでもないし、遊んでるつもりもないぞ、俺は。至って真剣だ。よく似合うと思うぞ、ルルシー先輩には」

真剣だって言うなら、最後まで真剣を貫いてくれ。

似合うか似合わないかなんて、どうでも良いんだよ。

「何でメイド服なんだ」

「ヘールシュミット邸に潜入した後は、このメイド服に着替える。そして、今度は掃除婦に成り済ますんだ」

…そういうことか。

「掃除婦の格好をして、モップを持って歩いてたら…屋敷の中をうろうろしていても、咎められることはないからな。合法的に屋敷の部屋にも入れるし」

「確かに…。でも、掃除婦だからって下手にあちこち出入りしてたら、怒られないか?」

「そのときは、『あっ、ごめんなさい間違えましたぁ~★』とか言って、お茶目なメイドを演じておけば良いんだ」

度胸あるよなぁ、お前。

俺は、メイド服にすら躊躇ってるのにさ。