「…乗り込むってのは、どういう意味だ」

「言葉通りの意味だ。王子様二人が白馬に乗って、プリンセスルレイアを迎えに行くんだよ」

その、妙にメルヘンな言い方はともかく。

その提案そのものには賛成だ。

「…行けるのか?本当に」

「行くんだ。王子様はいつだって強引だからな」

俺は王子になったつもりはないが。

「そもそも、ルレイアがヘールシュミット邸にいる保証がないんじゃないか?奇襲しても、ルレイアがいなかったら…」

「いなかったら、こっそり抜け出せば良い」

「…どういうことだ?」

俺のイメージでは、奇襲作戦と言ったら。

ルレイアがよくやる、あの正面突破だ。

玄関口を爆弾で吹っ飛ばして、一気に乗り込んで、ルレイアを拐って、混乱のうちにさっさと退散。

てっきり、あれをやるのだと思ったが。

「全くルルシー先輩は野蛮だな。俺達は王子だぞ?そんな乱暴な方法で姫を拐うなんて、ロマンチックさに欠ける」

別にロマンチック求めてないからな、俺。

そもそも王子ですらない。

「じゃあ、どうやってルレイアを取り戻すんだ?」

「もっとスマートな王子様を目指すんだ。これを使ってな」

ルリシヤは、透明なビニール袋に包まれた、紺色の作業服…の、ようなものと。

そして、女性もののカツラを二つ、差し出した。

…何これ。

「俺が調べたところ、ヘールシュミット邸には、火曜と木曜に委託業者が食料や日用品を運んでくる」

「…そうなのか?」

「そうだ。間違いない」

「…何でそれが分かるんだ?」

ヘールシュミット邸を見張っていた訳でもないのに。

「何でと言われても…。実はな、ルルシー先輩。俺、ヘールシュミット邸から逃げてくるときに、何ヵ所か監視カメラを仕掛けてきたんだ」

「は!?」

「と言っても、俺達が通った場所にしか仕掛けられなかったから、屋敷の間取りが全て分かる訳じゃない。残念ながらルレイア先輩も映っていないし」

お前…あの逃走時に、そんなことしてたのか。

ちゃっかりし過ぎでは?

いや、あのときは単に…俺が頭に血を上らせてただけか。

「でも、火曜と木曜に食料を運んでくることは分かっている。搬送している業者も突き止めた。で、この作業服が、その業者のものだ」

「成程…。変装して潜入するんだな?」

「まぁ簡単に言うと、そういうことだな」

正面突破よりは、確かに現実的だな。

正面突破しようにも俺達は二人しかいない上、まともに武器もない訳だし。

「俺が考えた作戦は、こうだ」

ルリシヤが、作戦の全貌を語り始めた。