そもそも俺達は、ルリシヤが送ったメッセージが、ちゃんと届いているかどうかさえ、定かではなかった。

届いていたとしても、ルヴィアの嫁が気づかずに放置してしまったり。

あるいは、イタ電と判断されて削除してしまったり。

その可能性も充分にあると思っていたから、メッセージが届いたのなら、それだけで満足だった。

いずれにしても、こちらに確かめる機会はなかった。

何しろ、意志疎通は今のところ、全く出来ないのだから。

それに、ルリシヤ曰く。

「一応支援はして欲しいと言ったが、まず出来ることは少ないだろうな」

「…だろうな」

アイズレンシア達幹部組は、顔が割れている為、シェルドニアに入国出来ないだろうし。

「大体、こちらにはルレイア先輩という人質がいるのだから、何をするにしても派手には動けない」

「…」

…そして、それは俺達にも当てはまることだ。

今のところ、国王は暗殺されていない。それどころか、国内に不穏な噂の一つもない。

そもそもこの国は、そのような不穏な空気とはほど遠い。

いつでも穏やかで、何より平和主義だ。

そのように仕向けられているのだから、当然と言えば当然だが。

「下手に動くと、むしろアイズ達の方が危ないんじゃないか?」

「俺もそう思う。だから、サポートしてくれるにしても、国内で手に入りづらい武器を密輸してくれるとか、そのくらいだろう」

「それだけでも充分じゃないか?」

この国は、とにかく武器というものがない。

裏社会もまともにないのだから、そもそも流通すらしていない。

一応警備兵は拳銃を持っているけれど、それだって国外から輸入したものだし。

武器を購入するには、武器商人にすっかり素性を明らかにしなければ売ってもくれない。

全く、平和過ぎるのも考えものだな。

「それに、そもそもメッセージが届いているかどうかも分からない状況で、あるかないか定かではない支援を期待するべきではないだろう」

「あぁ。俺もそう思う。だから、ルルシー先輩」

「うん?」

「俺達二人で、ヘールシュミット邸に乗り込もう」

「…」

…ルリシヤの、この度胸の良さは尊敬しているが。

そういうことを言うときは、もう少し前置きしてから言ってもらえないだろうか。