The previous night of the world revolution4~I.D.~

さて、3×5か。

どう教えたら良いものかな。

「そうだなぁ。じゃあ、私がアリューシャに、小分けのチョコレートを3つあげたとしよう」

「おぉ!マジ?アイ公さんきゅ」

「そうしたら、ルレイアやルルシー、シュノとルリシヤが、自分達も欲しいと言ってきた。なら、私は何個チョコレートを用意したら良いかな。何個あれば、皆でチョコレートを3つずつ食べられる?」

こう言えば、アリューシャにも分かりやすいかな、と思ったら。

「ん~…。18!18個要る」

…と、答えた。

「…15じゃない?」

18という、以前のアリューシャならイメージすら難しかった数字が、ポンと出てきたのは嬉しいが。

3つ多いと思うんだけど。

「だって15個だったら、アイ公が食べられないじゃん。用意するだけでアイ公だけチョコ食えないなんて、アリューシャやだもん。チョコ食うなら、皆で食う」

「…成程」

これは一本取られたな。

アリューシャの言う通りじゃないか。

「仲間外れは良くないんだぜ、アイ公」

「全くだ。仲間外れはいけないね。アリューシャが正解だよ。そこの答えは18だ」

「やったぜ!」

アリューシャは、3×5=18、と書いた。

私は引き出しから赤ペンを取り出して、その答えに花丸を書いた。

誰にも文句は言わせない。これはアリューシャが正解だ。

「算数上手になってきたね、アリューシャ」

「だろ?」

「九九は覚えた?皆が帰ってきたら聞かせてあげるんでしょ?」

「むむ…それはまだ。九九はな~…。2の段までは覚えたんだけど」

2の段か。よしよし。

「じゃあ、2×4は?」

「2×4…。にし…にしが6!」

「本当に6?」

「うぇ?うーん…。にし…が、8!」

やれば出来るアリューシャじゃないか。

さすがだ。

「正解だよ。その調子だね」

「いえーい!やったぜ」

今ここにルルシーがいたら…アリューシャを見て、きっとやれやれ、と溜め息をつくんだろうな。

それをルレイアが宥めて、ルリシヤはきっと…私と同じように、アリューシャを褒めてくれるだろう。

不意にそんなことを考えてしまう自分が、どうにも疎ましい。

今は考えても仕方ないことなのに…。

などと、内心嘆息していた、そのとき。

「アイズさん。ルヴィアです。失礼します」

ルルシーのところの準幹部、ルヴィアが。

私の部屋を訪ねてきた。