女性の部下二人にフューニャを託し、新しい携帯の用意を命じてから。

俺はヴァルタを伴って、フューニャの携帯を手に、アイズさんの部屋に向かう為、エレベーターに乗り込んだ。

すると。

「…変わったもんだな。あの子」

ヴァルタが、ぽつりと呟いた。

…変わった?

「誰が?…フューニャ?」

「あぁ。お前は想像もつかないだろうが、あいつ、昔は酷い男嫌いだったんだぞ。自分は絶対男なんて好きにならないし、結婚なんてもっての他だと公言していたのに。始めの頃は、ルアリスやユーレイリーでさえ警戒してたくらいだ」

そうだったのか。

全然想像つかねぇ…。俺が座ってたら隣に来てすりすりしてくるし、頭を撫でると大層喜ぶフューニャが。

男嫌いか…。まぁ、最初に会った頃は…ちょっと警戒してたみたいだけど…。

「幸せそうで何よりだ。あの一族は、特にな。一人でもあんな風に幸せに生き残っているなら、一族の皆も満足だろう」

「…」

…フューニャの…一族、か。

ヴァルタに聞けば、色々と分かるのだろうけど…。

「聞かないのか?私なら、あの子の故郷や一族のこと、色々答えられると思うけど」

「いや…聞かないよ」

「ふぅん…?興味ないのか?」

「興味ない訳じゃないけど。でも、フューニャが自分から話してくれるまでは、聞かない。無理に知らなくても良い。フューニャがどんな過去を持っていようと関係ない。俺が好きなのは、今のフューニャだから」

「…へぇ」

ヴァルタは、にやり、と笑った。

「成程ね。あの子が惚れる訳だよ。全く甘い男だ」

「甘くて結構だ」

フューニャが幸せに、笑っててくれるのなら。

それ以上に大切なことなんて、あるものか。