「いや、大丈夫だよ。どうした?」

『あの…。ちょっと気になることがあって』

…気になること、だって?

やっぱり…何か良くないものが見えた、とか?

「気になることって?」

『私の携帯に…おかしな音声メッセージが来てて』

「おかしな音声メッセージ…?イタ電か?」

うちのフューニャがいかに可愛いからって、ちょっかいを出すとはいただけない。

もし、何処ぞの小汚ないおっさんが、「今、何色のブラしてるの?ゲヘヘ」なんてメッセージを入れててみろ。

マフィアの権力、濫用してでもぶち殺しに行くからな。

『いえ…。イタ電かどうかは分からないんですが』

「分からない…?」

『とても不思議なメッセージで…。聞いてみてもよく分からないんですが、でも…何だか暗号めいたメッセージで』

…暗号。

『色んな国の言葉を組み合わせたような話し方で…。もし、ルルシーさんやルレイアさん達に関することだったら、と思って…』

「…成程」

そういうことか。

『私も…何だか妙に、このメッセージを無視出来なくて、気になって…。ルヴィアさんに聞いてもらえたら、と思ったんですけど…』

「…分かった。聞いてみるよ」

フューニャが無視出来ない、気になる、と言うのなら。

俺も無視出来ないし、気になる。

『メールに添付して送りましょうか』

「いや…。もしルルシーさん達からのメッセージなら、妄りに音声ファイルを触るべきじゃない。携帯ごと持ってきてくれ。部下を迎えにやるから」

『…分かりました』

本当は、俺が迎えに行きたいところだが。

さすがに、準幹部である俺が本部を離れる訳にはいかなかった。

強面の黒服サングラスが迎えに来たら、フューニャも怯えるだろうと思い。

俺は、出来るだけ若く、優しげな顔をした部下を選んで、フューニャを迎えに行くように指示した。

うちの嫁が可愛いからって、くれぐれも変なことは考えるなよ、とも言い含めておいた。

「…フューシャが来るのか?」

部下を迎えにやらせた後、ヴァルタがそう聞いた。

あ、ごめん…。ヴァルタのこと忘れてた。目の前にいるのに。

「あぁ。ルルシーさん達の安否に繋がる…かもしれない情報がある。フューニャ自身が、気になるって…」

「フューシャ…あぁ、もう面倒だからフューニャで合わせるよ。あの子が気になるって言うなら、確かに耳を傾けておいた方が良い。あの一族の直感は、本物だ」

「…俺もそう思う」

彼女の一族のことなんて、俺は知らないし、別に知りたいとも思わない。

俺はフューニャを信じているだけだ。

「ヴァルタ。お前をアイズさんのもとに連れていこうと思ったんだが…。悪いが、もう少しここにいてもらって良いか」

「あぁ。私もそのつもりだ」

ヴァルタと共に、フューニャに送られてきたという謎の音声メッセージを聞こうと思った。