…とにかく、こいつらに本気で暴れられたら死者が出る。

出来るだけ、穏便に済ませたい。

「…『青薔薇連合会』の主力がこんなところまで、ご苦労様なことだな。何をしに来た?」

俺は冷静に、話をしようとしたつもりなのだが。

それが、何故か女幹部の逆鱗に触れた。

「何をしに来た、ですって…!?白々しいことを…!」

何だと?

「シュノ、落ち着いてったら。あとは私が話すから」

「…っ…」

シュノとかいう女幹部は、仲間に諫められて、唇を噛み締めて引き下がった。

そしてその代わりに、次期首領の幹部が、ぎろりとこちらを睨み付けた。

その眼差しは、さすがマフィアのそれである。

「…さてと…。まず、こちらはいつでもあなた方の命を奪えるのだということを、分かってもらいましょうか」

そう言って、すっ、と手を上げた瞬間。

凄まじい破砕音と共に、窓ガラスが割れて、室内にその破片が飛び散った。

俺は思わず、驚愕して窓の外を呆然と見つめてしまった。

…マジかよ。強化ガラスだぞ。

何処から、何を撃ってきてんだ。

「…充分に理解した。今日はまた、遙々大軍を引き連れて、何の用だ?」

オルタンスが、ようやくまともなことを言った。

最初からそう言え。

「何の用、とは随分白々しい…。私達が何の為にここに来たのか、分かっているはずでは?」

…何?

この次期首領と、そして後ろで憤怒に燃えている女幹部の様子を見たところ。

どうやら俺達は、こいつらに何かしたんだな?

少なくともこいつらは、俺達に何かをされたと思ってる。

『青薔薇連合会』が、徒党を組んで攻めてくるような何かを。

何だ、それは。

俺には、何も覚えがない。

『青薔薇連合会』とは、近頃、良好とまでは言わずとも…険悪な仲にはなっていない。

敵対する理由も、何もないはずだ。

「…申し訳ないが、何も思い当たる節はないな。教えてもらえないだろうか」

「…良いだろう、分かった…。先日、あなたはルレイアにクリスマスプレゼントと称して、シェルドニア王国の豪華客船の旅を送ったね?」

は?

隊長達全員が、オルタンスを見た。

「その旅に行ったきり、ルレイア達との連絡が途絶えた。この旅行に何かが仕組まれてると考えるのは当然だよね?」

「…!」

珍しく。

オルタンスは、驚いた顔を見せた。