「一体、何があった?」

オルタンスは、落ち着き払ってそう尋ねた。

こいつがこういうとき冷静なのは有り難いが…。

「あ、『青薔薇連合会』です。『青薔薇連合会』が、攻めてきて…!迎撃に当たった警備の騎士が全滅状態で…」

「な、何だと…!?」

「『青薔薇連合会』が…!?」

ユリギウスやルーシッドは、この反応だったが。

オルタンスは、何故かわくわくした顔で、

「…ルレイアが遊びに来てくれたのか?」

「…何を喜んでんだ、お前は」

喜んでる場合じゃないだろ。

攻めてきたんだぞ。状況分かってるか?

「何であいつらが殴り込みに来るんだ?今、俺達には『青薔薇連合会』と敵対する理由はないだろう」

「分かるものか、マフィアの考えることなど…!」

いや、あいつらだって馬鹿じゃないんだからよ。

戦うべきじゃないときに戦ったりはしないだろう。

「おいオルタンス。お前、またルレイアに何かしたんじゃないだろうな?あいつをキレさせるようなことを…!」

「ルレイアが自分から会いに来てくれるなんて、一体いつ以来だろうな」

「だから、喜んでる場合じゃないだろ!」

何わくわくしながら待ちわびてるんだ、この馬鹿!

「とにかく迎撃だ。あいつらが本気で攻めてきてるなら、生半可な迎撃じゃ手遅れに…」

と、言いかけたそのとき。

報告に来ていた騎士が、前のめりに倒れた。

「いいえ、既に手遅れよ」

そして、その後ろから。

ルレイアと同じような、真っ黒な衣装で身を固めた若い女が、拳銃を片手に会議室に入ってきた。

…この女、見覚えがある。

「お前…『青薔薇連合会』の幹部だな?」

「…えぇ、そうよ」

「…」

女だと思って見くびれば、痛い思いをするだけでは済まない。

それぐらいは、すぐに分かった。

ルレイアが鎌振り回しながら攻めてきたんじゃないと思えば、その点では希望が持てるものの…。

この女だって、並みの相手ではない。

と、いうのに。

「…ルレイアじゃないのか」

何故か、ちょっとしょんぼりしているオルタンス。

お前、どんだけルレイアに会いたいんだ。

ふざけたこと言ってる場合じゃねぇぞ、と言ってやろうとしたら。

その前に、女幹部の方がキレた。

「…っ!ふざけたこと言わないで!あなたが、ルレイアを…!」

女幹部が、オルタンスに拳銃を向けた。

思わず立ち上がりかけた俺達のもとに。

「シュノ!落ち着いて。まだ話を聞いてない」

もう一人、『青薔薇連合会』の幹部がやって来た。

…こいつも見覚えがあるな。確か…『青薔薇連合会』の次期首領候補筆頭と言われてる男じゃないか。

『青薔薇連合会』が攻めてきたと聞いて、まず俺達が想像したのは、あの死神とその相棒だった。

それなのに、姿を見せたのは女幹部と次期首領。

これは…一体どういうことだ?