「だってそうでしょ?
この一連の事故は、まだ終わりではないと思うの…
貴方のその力があれば、大勢の人が救える筈なのに、それなのに――」
「勘弁してくれよ。
最愛の人を目の前で亡くし、その温もりがまだこの手の中にあるのに…
ここに、1人きりにして行けと言うのか?」
「桐山さん…」
ストリートミュージシャンが、桐山の肩にそっと手を置いて首を横に振った。
「ごめんなさい…」
「行こう」
2人はゆっくりと部屋を出て行った。俺はもう振り返る事もなく、背を向けたまま遠ざかる気配だけを感じた。
今の俺には、大勢の人達の事よりも、祖母の側にいる事の方が数倍大切な事なんだ。
――…大地…大地や。
「誰?」
そんな情けない男になる様にと、その名前をつけた訳ではないよ。
「祖母ちゃん…
祖母ちゃんか!?」
私の事はいいから、2人と一緒に行きなさい。大勢の人達を救う事が出来るのならば、1人でも多くの人を救いなさい。
「祖母ちゃん、でも…」
大地…
お祖母ちゃんはね、側にいてくれるよりも、その方が数倍嬉しい…――
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