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畳に両手をついて項垂れる俺の背後から、桐山が声を掛けてきた。

「無理ではなくてよ」

「ちょ…いい加減な事を言うなよ」

「あのストリートミュージシャンの方、瞬間移動がお出来になると、ブルンが言ってましたわよ」


あ――!!
そうか、本当にそんな事が出来るなら、ここから俺の自宅など一瞬で移動出来る筈だ。

直ぐに俺は外に飛び出し、さっきのストリートミュージシャンを探した。


ギターが聞こえる方に走って行くと、まだ同じ場所で演奏をしていた。

俺はその前に座り込むと、頭を下げて頼み込んだ。

「お願いがある。
俺と祖母を、自宅まで移動させてすれないか?

どうしても、祖母を自宅に帰してやりたい…」


ストリートミュージシャンは演奏を止め、暫く考えていたがスッと立ち上がった。

「分かった。
自分以外の人と一緒というのは初めてだけど、やってみる」


俺は祈る様な思いで、ストリートミュージシャンを連れて再び駅へと戻った。


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