バスターミナルに着くと、そこは僅かなスペースも無い程に人々に覆い尽くされていた。

「何だこりゃ」


この街は県内の中核都市で、あらゆる鉄道路線とバス路線が集まる。

当然、ロータリー形状になっているこのバスターミナルにも人は多いのだが、この状況は異常だ。おそらく、事故で電車が止まっているからなのだろう。

俺は人と人との隙間を見付けては、自宅方面に向かう8番バス乗り場を目指した。



余りの人の多さに中々前に進む事が出来ず苛々がピークに達した俺は、ちょうど6番乗り場の辺りで強引に足を踏み出した。

「痛い!!」

足の裏に柔かな感覚した瞬間、悲痛な叫び声が響き、目の前の女子高生が振り向いた。

「きちんと足元を確認してから、慎重に足を踏み出して下さる?」

「あ、悪ぃ」


振り向いたロングヘアーの女子高生は、黒縁メガネの奥に見える茶色の瞳で俺を睨み付けた。


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