病院は駅前と言っても交差点までは行かず、本当に目の前だった。


駅前通りにある古い雑居ビルの3階にある個人病院は、祖母の以前からの掛かり付けの医者らしい。

祖母が医者の診察を受けている間、俺は窓から通りを見下ろしていた。


平日の昼間がどういう雰囲気なのかは知らないが、街中は休校になる程の状況にありながらも、交通量も人通りも割りと多い様だ。

マスコミが騒ぎ過ぎなのか、それとも人々に危険察知能力が欠落しているのか…



祖母の診察は受付から1時間余りかかったが、無事に終了した。

「待たせたね」

「いや、思ったより早かったよ」



辛気臭いビルから外に出て、俺は胸一杯に空気を吸った。そんな俺を、祖母は変わらぬ優しいの笑顔で見詰めていた。

「ついてきてくれた御駄賃に、お菓子でも買ってあげようかね」

「ははは、子供じゃないんだからいいよ」

「そうかい?
それなら、何か飲み物でも買おうか」

「じゃあ、俺があのコンビニで買ってくるから、ここで待っててよ」


500円玉を受け取り、コンビニに向かって走り出した時だった――


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