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やっと横断歩道を渡り、その先にある駅に着いた。

しかし、話に聞いていた無料バスの姿は無い。


俺はタクシーすら停まっていない駅前のロータリーを、1人で見詰めていた。

「どうなってんだ?
確かに、先生は無料バスが運行してると言ったぞ…」

「1台しかないからじゃ」

「うおっ」

背後から突然返事が聞こえ、俺はみっともない程に動揺して振り返った。


「オ、オババか…」

オババとは駅にある売店の販売員をしている年齢不詳の老婆で、帰宅途中の駅の売店で週間漫画を買う俺は、すっかり顔馴染みになっていた。

「無料バスは、1台しかないんじゃよ。今は向こうに行っているんじゃ」

「そうか…それなら待ってるしかないな。

それにしても、早く復旧しないと不便で仕方ないよ」


小柄なオババは俺の言葉に丸くなる位に頷き、力を込めて言った。

「まったくじゃ。
駅に利用者が来ないと、おまんまの食い上げじゃ」

「そりゃそうだな」


それから10分余りオババと世間話をしていると、無料バスが帰って来た。


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