俺は怯える様に1歩2歩と後退りすると、その場から全力で走って逃げた。
帰宅する為に駅に向かうつもりだったが、あの状態では運行する筈がない。
街中を悪夢から逃げる様に必死で駆け抜けた俺は、赤信号に止まり、中腰になって肩で大きく息をした。
既に事故現場から立ち上る黒煙は、ビルの向こう側になっている。
その時――
股の間から逆さまに見えた、家電量販店のショーウィンドウに飾られた大型のテレビに、事故現場の様子が映し出されていた。
俺は上体を起こして振り返ると、ショーウィンドウに近付いた。
5台並べられたテレビの内、4台が速報として列車の衝突事故の報道をしている。
それはそうだ。
あれだけの事故は、世界中でも前例が無いのではないか?
しかし、食い入る様に見ていた俺は、その画像に違和感を感じ、ガラスに額を付けた。
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