人々の歓声の中を、美空は戻ってきた。

「美空、お前凄いな!!」

「私まで感動しちゃったよ」

美空は照れ笑いを浮かべながら、いつもと同じ様に言った。

「見てると黙っていられなくなって…」



「あ、君達!!
本当にありがとう。これで、皆で峠を越える事が出来るよ」

篠原と遠山が、俺達の所に駆け寄ってきた。表情は明るくなり、重苦しい雰囲気は消えていた。


「いえ、僕達ではなく美空が頑張ったんですよ」

「ああ、そうだったな」

そうだったなって…
まあ、それはそうだけど。


「もし君がデビューする様な事があれば、絶対に買うからね」

「ありがとうございます」

篠原と遠山はそう告げると、手を振って坂道を下って行った。


暫くすると坂の下で大歓声が上がり、この辺りの空気までもが響いていた。

この峠を直ぐにでも越えなければならない程に、全員が疲弊していたのだろう。


それにしても――


.