信じられない事が、目の前で起きた――


武装したメンバーが1人また1人と動きを止め、美空の歌を聞き始めたのだ。

メンバーの中には、火炎瓶や鉄パイプを手放す者すら現れた。


美空の歌は狂気に満ちた空気を包み込む様に広がり、やがて飲み込んだ――



マルスのメンバーは立ち止まり、泣いている者までいた。

警官隊は拳銃を収め、警棒さえも持ってはいなかった。


美空が再び歩き始めると目の前の人波が割れ、バリケードに向かって1本の道が現れた。

美空はその道をゆっくりと歩き、1人でバリケードの前に立った。


「貴方達は恥ずかしくないんですか!!

マルスの人達は、一体何の為に戦っているんですか!?
仲間を踏み付けて進もうとする貴方達には、どんな崇高な志があろうと無意味です!!

警官隊の皆さんも、一体誰の為に働いているんですか!!
政治家の為ですか!?
それとも国民の為ですか!?

いい加減にして下さい!!」


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