「で、国会議事堂ってどっちだ?」

「さあ…」

「知らない」

これだから田舎者は…



俺達はとりあえず東京駅から離れ、それらしい方向に歩く事にした。

それにしても、これだけの大都市なのに、全く人影が無い。ほぼ全員が家や職場を捨て、首都圏から脱出したという話は本当だったんだな…


それから片側4車線の道路の真ん中をひたすら歩いたが、全く誰とも会わなかった。

一体どこを歩いているのかさえも、全く分からない。標識の地名も、聞いた事はあってもそこがどの辺りなのか、分かる筈もない。

「穂波、地図とか用意してこなかったのかよ」

「忘れてた…」


振り返ると、美空が中央分離帯に座り込んでいた。

「どうしたんだ美空?」

「もう1時間以上歩いてるし、ちょっと休もうよ…」


その時――

突然どこらともなく、呼び止める声が聞こえた。


「そこのお前達ちょっと待て!!」


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