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「大地君」

不意に名前を呼ばれ驚いて振り返ると、そこに美空が立っていた。

いつもの様に、赤と白のチェック柄の厚いシャツに擦り切れたジーンズを履き、靴はワインレッドのスニーカー。そしてギターを背負い、弟の赤いキャップを被っていた。

ただ、いつもと違い、目には強い光が宿っている…


「おっす」

美空は1歩2歩と近付いてくると、俺に頭を下げた。意味が分からず戸惑っていると、美空が口を開いた。

「あのね…
本当は昨日、全部投げ出して何も無かった事にしようと思ったの」


え…!?


「でも、出来なかった…

大地君と穂波は絶対に諦めず、今頃はこれからの事について考えているんだろうなと思うと、私だけ逃げ出す訳にはいかないから。

ごめんね…
先が見えなくても、もう2度と逃げ出そうとしたりしないから」


俺は頭を下げる美空の肩を叩くと、昨夜の事を話した。

「……ごめん。
昨日の夜俺も同じ事を考えていたんだ。
でも、美空も穂波も絶対に諦めたりしなないだろうと思って…」

2人は顔を見合わせると、思わず吹き出してしまった。



「よし、行こう!!」


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