光化学スモッグで霞んだ空が、一瞬にして立ち上る黒煙に覆われた。


突然、目の前の線路で普通電車が正面衝突し、ほんの数メートル前で、線路の金網を突き破った後続の車両が2回転して止まった。

そして、車両から吹き出した炎と悲鳴が響き渡る中、逃げ惑う人達に追い討ちをかける様に、もう一列車右側から突っ込み、衝撃でくの字になった車両が反対側に崩れ落ちた。


俺は身動きすら出来ず、車両が燃える鼻を突く異臭と、鳴り響く救急車のサイレンの中で、ただ茫然と立ち尽くした。

ほんの10分前、担任と言い争って教室を飛び出した俺は、足でグランドに大きくアカンベーを書いていたのに…


平穏な時の逃れが、突然の地響きを伴う衝突音により掻き消された。

こんな列車事故など、これまでに聞いた事も見た事もない。


有り得ない。
何がどうなれば、こんな事態になるんだ?


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