「カップルですかーだって」

観覧車の扉が閉まるなり、藤田くんが悪戯っぽく言った。


「ちょっと、やめてよ」

私はというと、まだ顔の火照りが収まっていなかった。


「顔、真っ赤じゃん」


「もー、からかわないでよ」

そう言った次の瞬間、藤田くんの顔がずいっと近づいてきた。


「な、なに?」


「俺は、ほんとにカップルになっちゃってもいいんだけどなー」


「ちょっと、ほんとにからかわないでってば」


藤田くんの顔がふっと笑ってから、遠ざかっていく。


「ごめんごめん。冗談だよ、冗談」


私は仕返しに顔を少しだけムッとして見せる。


「ほんとにごめんって」