「ピアスは禁止だと何度言ったらわかるの!」

朝から学校に響きわたる私の声。

これは別にいつものことだ。


「えー、別によくない? かいちょーは今日も堅いなー」

そして、この男はいつもそう返事をしてくる。


藤田塁。

同じクラスの男子で、髪は茶髪、いつもピアスをしている。

だからこうして、いつも注意をしてるけど、一向に直る気配なんてない。


「もー、早く行こうよぉ。」


そう言いながら、藤田くんと腕を組んでいるのは植田麗那先輩。

麗那先輩は、1学年上の3年生の先輩だ。


──今日は、麗那先輩なのか。

そう。藤田くんはとにかく女癖が悪い。

正直呆れるけど、私には関係のないことだ。


「とりあえず、ピアスは没収です!」

手を出すと、はいはいと言いながら藤田くんがピアスを手に乗せた。


こんなことをいつもしているからか、いつしか私は『冷徹生徒会長』なんて呼ばれるようになっていた。


でもそんな私にも、誰にも言えない秘密がある。


..。*゚ ..。*゚゚ ..。*゚ ..。*゚゚ ..。*゚ ..。*゚゚ ..。*゚ ..。*゚

帰りの号令をしてすぐにスポーツバッグを抱えて、学校の近くの公園にある公衆トイレに駆け込む。


金髪のウィッグをかぶり、ピンクのグロスとチークを塗る。

鏡に映る姿にはもう冷徹生徒会長と呼ばれる私、朝倉紗良の姿はない。


そしてまた、公衆トイレを出たあと、急いでバイト先に向かう。