とうめいな水

「へえー、深樹(みき)ちゃんって言うんだ」
「はい」
「本読むの好きなの?」
「はい、あと絵本とか」
「絵本!いいね!」
 安堂が女子二人の会話に親指を立てる。
 三人は盛り上がっていたが、僕は静かに開封したキャラメルの紙をいじりながら話を聞いていた。
「文芸部に興味ある感じ?」
「とりあえず、見学に来てみて、それから決めようかなって」
「あ、入部?」
「はい」
 それから少し黙って女子は僕の方を見た。
「あの…」
「…?」
「迷惑でしたか…?」
「え…?」
「私がここに来たこと」
 周りが一瞬しーんとして、安堂と中松が驚いた表情で言った。
「何言ってんの!大歓迎だよ!」
「部長が無愛想でごめんね」
「ほら!部長もなんか言ってくださいよ!」
 僕は唖然としてしまった。そんなことはないし、そんな態度でいた意識はなかった。
「…そ、そんなことはない、絶対ない、嫌な態度に見えてたなら、ごめんなさい」
 僕は謝った。
「ほんとですか…?」
 深樹という女子はなんだか僕に怯えている?ようだった。
「来てくれて本当に助かるよ、新一年生きてくれなかったら、僕ら卒業と同時に廃部だったから」
「そう、だったんですね…」
 すると、深樹は少しもじもじして、急に声をあげた。
「私!入部!決めます!」
 安堂、中松、僕が驚いた様子で深樹を見た。誰もがそんなこと言われると思っていなかった。
「ほ、ほんと…?」
「マジ?え、マジのマジ?」
「いいの?」
 深樹は笑って言った。
「はいっ」
 突如現れた女神が美しく、光が差して神々しく見えた。