御曹司は優しい 音色に溶かされる

その頃日本で、千隼は健司の電話での報告を
受けていた。

7月には帰ってくるだろうと思って
いたのに、ゆりえがアナハイムに
マンションを借りたという報告には
がっくり来た。

ゆりえの作曲したミュージカルが好評だった
というのは日本にいてもニュースに
なっていた。

日本人の女性がオフ・ブロードウエイの
ミュージカルの音楽を手掛けて賞も取った
というのはこちらでは結構ニュースに
なっていた。

千隼はゆりえの活躍は正直嬉しくて
誇らしかったが、まさか向こうに住む事に
なるとは思っていなかった。

もう二年我慢した。限界だ。

ゆりえを迎えに行きたい。

でも、ゆりえは分かってくれるだろうか?

赦してくれるだろうか?

この二年一度も連絡を取らなかったことで
却って千隼はゆりえに対して遠慮が
できてしまった。

強引に突っ走る自信がない。

今度こそ失敗できない。

どうしたらいいのか悩んで動きが取れない。

仕事に関しては決断が速い千隼なのに
ゆりえに関してはどうする事がいいのか
わからないのだ。

今となってはボストン行きを黙認したことさえ
悔やまれる。

はーっと深いため息をついたのを、
第二秘書の恵子に見られた。