御曹司は優しい 音色に溶かされる

その夜健司は部屋を抜け出してホテルの
近くの二十四時間営業のカフェにいた。

向かいの椅子にいるのは千隼だ。

千隼は一目ゆりえに会いたくて、
自分のコネを最大限に使い今日のパーテイ
にもぐりこんだのだ。

ゆりえのピアノを弾く姿を見ることができて、
満足だった。

あと半年くらいで卒業だ。

そうしたらゆりえは日本に帰ってくるだろう。

その日が待ちどうしい。

健司はチルアウトのバイトでピアノを
弾いていた音大の3年生だったのだが、
大学には奨学金で通っていた。

生活費を稼ぐ為にバイトをいろいろ
掛け持ちして働かなければならない
状況だった。

そこで、千隼は健司に声をかけた。

ボストンの音楽大学の3年生に
編入させて、授業料も生活費も
面倒を見る。

その代りにゆりえに近づく男達を
牽制する事、できればゆりえと知り合い
近況を報告する事、その二つを条件
として千隼は健司に出資を持ちかけた。

健司は想像以上の働きをしてくれている。

ゆりえ達とジャズバンドまで組んで
ゆりえの近況をユーモアも交えて
楽しく報告してくるのだ。

千隼は週一回のラインでの健司の報告が
楽しみになっていた。

もちろん色んなゆりえの写真も送ってくれる。

そしてゆりえの仲のいい友人の情報も
報告してくる。

ジョジュと呼ばれているイケメンはゲイ
なのでゆりえの近くにいても問題ない。

却ってほかの男を寄せつけない為に
役立っているほどだ。