御曹司は優しい 音色に溶かされる

「えっ、西條グループの西條さん?
社長さんなんですね。お若いのに…
それともお若く見えるだけ?」

ちょっと失礼な疑問にも気付かず名刺を
見て呟いている。

「ゆりちゃん、心の声が駄々洩れだよ。」

ユウジに言われて、はっと口を覆うゆりえを見て
二人とも笑っている。

「ゆりえちゃんよりはおじさんだけど、
二十七歳だよ。
もうすぐ二十八になるけどね。」  

すみませんと真っ赤な顔をして謝る
ゆりえがまた可愛くて、千隼はすっかり
ゆりえが気に入ってしまった。

彼女の優しい微笑と初心で真っ赤な顔を
しながら謝るそんな彼女に、自分が恋に
堕ちたとはっきりと自覚したのだ。

この年まで、見目のいい容姿と西條の
御曹司という境遇に惹かれて、いいよる
女は星の数ほどいたが、自分が堕としたい
と思った女はゆりえが初めてだ。

今まで来る者拒まずで、適当に遊んできた
千隼は、大学生で初心なゆりえに対して
どうアプローチをとったらいいのか
わからなかったが、とりあえず焦らず
少しづつ囲い込むしかないかと、今日の所は
引くことにした。