御曹司は優しい 音色に溶かされる

翔太の仕事も引き継がなくてはならないし、
今シンガポールの企業の吸収合併が
終わったところで現地の会社を軌道に乗せる
必要もあった。

三週間という長い出張で何とか現地で采配を
振るえる者の人事も終え帰ってきてからは、
仕事の合間に翔太の周りのケイコを手当り
次第に探し出して、接触を図っていた。

クラブのホステスや学生時代の知り合い、
翔太の友人たちにも尋ね歩いた。

西條グループの関連会社のCMに出ていた
モデルのケイコにも接触した。

ゆりえには申し訳なかったが、そんな女達に
触れた手でゆりえに触れるのは嫌だった。

千隼は絶対にそんな女達を抱いたりは
しなかった。

話を聞いて違うと感じると途端に冷たい
態度で追い返した。

それでも、懲りずに何度も会社を訪ねて
来たりホテルで待ち伏せするなどの
鬱陶しい女もいた。

余計にマンションには帰れなかった。

ゆりえがそんな女達に汚されるようで
我慢ならなかったのだ。

解決すればすべて話してゆりえに許しを
請うつもりだった。

千隼の自分勝手な驕りでどんなにゆりえを
傷つけていたか千隼は考えが
及んでいなかった。

ユウジに何度も注意された。

一度チルアウトにゆりえがユウジを
訪ねてきた。

間が悪いことに、その時の千隼は女を
連れていた。

その女はクラブのホステスでやはりケイコと
言ったが、翔太とは面識がないと知れたので
適当にあしらって追い払うつもりだった。

そこにゆりえが現れて、千隼に視線を止めた

ゆりえは目に涙をいっぱい溜めて悲し気に
千隼を見ると何も言わずに走り去った。

千隼は後を追うこともできなかった。

すっかり酔っぱらっていて脚が
動かなかったのだ。

ユウジが追いかけてくれたので、きっと
タクシーに乗せてくれるだろう。

女をそこに放置してホテルの部屋に
帰ってきた。

そこはすっかり千隼の部屋になっていた。

今からマンションに行くべきか迷ったが
酔いが回って立っていられなかった。