御曹司は優しい 音色に溶かされる

次の日は土曜日で早苗は昼まで寝ていたが、
午後からは事務所に出なければならない
と言って、帰っていった。

早苗はまだ実家暮らしだ。

修習生が終われば給料も上がるので
一人暮らしをすると言って頑張つている。
そんな早苗を送り出して、ゆりえは
マンションに一度帰ってみたが、
やはり千隼はいなかった。

ゆりえは父母や祖父母の仏壇に
コンクールの結果を報告した。

いつものように水を変えて手を合わせる。

千隼にボストン行きを伝えなければ
ならないので、手紙に今のゆりえの心情や
コンクールで金賞を取ったので副賞の
ボストンの音楽学校に行かせてほしい事、
でも金銭の援助は必要ない事などを
なるべく簡潔に書いた手紙を、ホテルの
千隼の部屋に届けることにした。

ここに帰ってくればその時には、話が
できるし帰ってこなければきっと
ホテルの部屋に戻るのだろう。

ゆりえは溜息とともに外出の用意をして
マンションを後にした。

この頃は千隼は土日でもマンションには
めったに帰ってこない。

何処にいるのかもゆりえには
わからなかった。

ホテルへはタクシーで二十分くらいだ。

お昼も食べていないのでラウンジで何か
サンドウイッチでも食べようと思いながら
ホテルに着くと、まずはフロントに行って
千隼への手紙を部屋に届けてもらうように
手配を済ませた。

そして、エントランスを通りラウンジに
入っていった。