御曹司は優しい 音色に溶かされる

顔も見惚れるほどにイケメンでどこを見て
話せばいいのだろう。

彼はリラックスモードなのだろう。

高級そうな腕時計がこの男性の地位を
象徴しているようだ。

二十一歳の自分よりは年上だろうが、
三十まではいってないとゆりえは想像する。

あと一時間弱で最後のステージだ。

彼に見惚れてばかりはいられない。

少し控室でゆっくりしたいと思い千隼に
再度お礼を言って、飲みかけのグラスを
もって控室に行こうとした。

「ちょっと待って、俺の名刺だ。
また来るけど、ここのドリンクはいつでも
俺のおごりだ。
俺がいなくてもユウジに言ってなんでも
作ってもらって」

そういって名刺をゆりえに渡してくれた。

そこには西條グループ・西條エステイツ
代表取締役 西條 千隼とあった。

そういえばこのホテルも西條グループの
系列だ。

西條という名前とその地位からきっと
経営者一族の人だろう。

そんな巨大企業の御曹司に初めて会った。

ゆりえはちょっと引いてしまうくらい
びっくりした。