御曹司は優しい 音色に溶かされる

それでも千隼はなるべくゆりえの待つ
マンションに帰ってきてくれた。

ゆりえは千隼が体を壊さないか
そればかり心配した。

翔太の死後三カ月が過ぎる頃になると、
遅くなったときは西條系列のホテルに
泊まることが多くなってきた。

ゆりえがバイトしていたバーのある
ホテルだ。

流石に一ヵ月顔を合わさない様になって
くるとゆりえも不安になってきた。

仕事なのか、なぜ家に帰らないのか、
電話をかけても繋がらず折り返しても
くれない事も多くなって、ゆりえは突然の
千隼の変貌についていけなくなっていた。

これで家族と言えるのだろうか?

翔太の死の喪失感に苦しむ千隼に寄り添う
こともできない。

たまにゆりえの留守中に着替えを取りに
戻っていたりしているようだ。

悪いと思っているのか時々花束が届けられる

花屋から届く花束にはカードが付けられて
いていつも”リーごめん。千隼”と書いて
あるのだが、ごめんの意味がゆりえには理解
できなかった。

帰れなくてごめんなのかもう愛していない事
を謝っているのか、ゆりえには千隼が
分からなくなっていった。

それでも、ゆりえは千隼を責めることも
“ごめん”の意味を尋ねる事もできずにただ、
マンションで千隼の帰りを待ち続けた。