御曹司は優しい 音色に溶かされる

「ゆりちゃん、こちらのお客さんがドリンク
をおごってくださるそうだよ。
いつものでいい？」

ゆりえは、今気づいたように西條を見て大きく
目を見開いた。

大きくて澄んだ瞳の可愛い顔をしている。

身長は結構高い。

細身で出るところはしっかり出てスタイルも
抜群だ。

擦れていなさそうな清楚な可愛い系の美人だ。

千隼は一目で初心な様子のゆりえが
気に入った。

「ありがとうございます。お言葉に甘えても
よろしいんですか？」

と言いながら、ユウジを見て答えを待って
いるようだ。

まるで保護者のようにユウジは

「こちらの常連さんで千隼さんて
いうんだけど、ゆりちゃんのピアノに
癒されたんだって、よかったね。
遠慮なく頂けばいいんだよ」

ユウジはそう言ってゆりえがいつも飲む
らしいブラッドオレンジをゆりえの前に
置いた。

「では、お言葉に甘えていただきます」

喉が渇いていたのだろう一気にグラスの
半分ほどを飲み干した。

千隼はゆりえの細く白い喉がごくごくと
動くさまに、見惚れてしまった。

そんな自分に驚き口元を手で覆う。

「あ～美味しかった。喉が渇いていたので
助かりました。
ありがとうございます。」

そう言ってゆりえは、千隼に微笑んだ。

その微笑は、優し気でどこか不安げで、
庇護欲をそそる。

清楚な色気を含んだ凛とした声に千隼は
《これは男がほっとかないな。》と、
自分の事は棚に上げてユウジによく見てやって
くれと、後でくぎを刺しておかなければと
思うのだった。