御曹司は優しい 音色に溶かされる

「こいつは高校の時からほんとによく
モテていたんだ。
バレンタインの時なんか家に迄女の子が
チョコやプレゼントを持ってくるんだけど
千隼は家に居ても相手にもしないで
インターフォン越しに追い返していたな。
それでも何時間も門の前で待っている子も
いて、僕が代わりに預かってあげたんだ。
顔や手が寒さで真っ赤になっているのに、
流石に知らん顔はできないよね」

「何言ってるんだ、高校のバレンタインの
最高記録保持者がよく言うよ」

「僕はちゃんとありがたく貰っていたからね。
あとで近くの養護施設に持って行っておやつ
に食べてもらっていたけど、千隼が一年生の
時からもらっていてあげれば、僕の記録なんて
すぐに千隼に塗り替えられてたさ」

「どっちがひどいんだか、余計な期待させて」

「大学の時はもっとすごかったよ。
学内を歩いていて、なんだかキャーキャー
言ってる人だかりの中心には、不機嫌オーラ
満開の千隼が、ベンチに座って本を読んでたり
ベンチに横になってねていたりしていたよな。
よくあんなに騒がれていて平気で寝ていられる
もんだと僕も僕の友人たちも大物だと言って
感心していた」

そう言って翔太は笑っている。

「なんだよ、自分だってめちゃくちゃもてて
いたじゃないか。
高校も大学もいつも成績は学年首位をキープ
していたし、部活だってテニスで都大会まで
行っただろ」

「千隼は絶対僕より上に行かないように調節
してたよな。勉強も運動も、千隼が本気を
出せば僕なんてかなわないさ。
兄を立てて絶対一番にならないようにして
いたんだ。可愛い弟だろ、ゆりちゃん」