御曹司は優しい 音色に溶かされる

ゆりえには全く分からない手続きも係の人に
聞きながら、何とか手続きを済ませたのだが、
後ろに並んでいる人は待たされてうんざり
しているし、係の人も何もわからないゆりえ
がもどかしいのだろう次第に不機嫌に
なっていった。

そんな風にして人に教えを請いながら世間の
成り立ちを少しづつ学んでいったのだ。

早苗にその時のことを話すと、
一人で頑張ったねと褒めてくれた。

そしてその係の人の不親切に憤ってくれた。

それだけでゆりえは救われた気がした。

何時も早苗はゆりえを褒めてくれる。

でも、頑張れとは決して言わない。

ゆりえの不安定な心に優しく寄り添って
くれるのだ。

ゆりえは頑張りすぎだから、もっと人に
頼れとよく言われる。

祖父母が亡くなって二年程してようやく
ゆりえは一人で生活できるのめどが
立ったのだった。

早苗の両親にとてもお世話になった。

やっと一人歩きできるようになった
ゆりえは、チルアウトでのバイトでお金も
稼ぐようになった。

少しづつ前を向いて歩いていけるように
なったのだ。

でも親友の早苗以外に心をさらけ出せる
人はいない。

そんな早苗にも甘えることはできなかった。

弱音を吐けば早苗は心配するからだ。

これ以上早苗や早苗の家族に心配を
掛けられない。

早苗の父親は本当の娘のようにいつも
ゆりえを気にかけてくれる。

電話をかけてきてくれて、困ったことは
ないかとか彼氏はできたかとか、ゆりえの
近況を聞いてくれるのだ。

早苗はいつも、うちのお父さんは娘の
私よりゆりえが心配なんだよ。

と言って笑っている。