御曹司は優しい 音色に溶かされる

「ゆりちゃん、泣かないで。
突然でびっくりしたのはわかってる。
でも、真剣に考えて欲しいんだ。
俺と家族になること」

コクコクと頷くことが精いっぱいだった。

家族になろうと言ってくれる千隼の言葉が、
何よりうれしかった。

この頃泣き虫になっている。

一人で生きて行かなくてはいけない環境で
周りに甘えることはできないし、強く
ならなければといつも気を張って
生きてきた。

祖父母がなくなってからは特に生きていく
ことがこんなに難しい事なんだと
思い知った。

祖父母が無くなって、相続や祖父母の死亡届
などこまごまとしたことは弁護士の先生が
やってくれたけれど、その後の暮らしに
ついては、ゆりえは何もわかっていなかった

何とか固定資産税、光熱費、大学の授業料の
支払いなどは請求が来るのでわかるのだが、
ある日高熱で病院に行ったとき保険証と
言われてそういえば今まで祖父の扶養に
入っていたので保険証は当たり前のように
持っていたが、祖父が亡くなっ時に年金手帳
や保険証なども返納したのだった。

だからゆりえが世帯主になる。

国民健康保険に加入しなければならないのに
手続きを怠っていた。

何万という医療費を払う羽目になった。

そんな思いをしながらうかうか病気にもなれない
ことを実感した。

保険に入っていなければ、風邪を引いて医者に
かかるだけでも、沢山のお金を支払わなければ
ならない事を知った。

公的機関は例外などない。世の中にはもっと
大変な事情を抱えた人がいるのだ。