御曹司は優しい 音色に溶かされる

千隼はゆりえに掛ける言葉もなかった。

十八歳ですべての家族を失いそれからたった一人で
生きてきたと言う少女の強さに感動した。

リビングに置かれた小さな仏壇が二台それぞれに、
ゆりえの父母と祖父母の位牌が入っていて、
その前には花が飾ってありお菓子やビールなどの
お供えが置いてあった。

毎日仏壇に手を合わせているのだろう。

きれいに整えられている。

千隼は自分もまず仏壇に手を合わせてゆりえの
家族に挨拶をした。

《ゆりえをこれから守っていきたい。
絶対に幸せにするのでどうぞ見守ってほしい》

そんな気持ちで手を合わせた千隼は

「ゆりちゃん、辛かったね。
よくここまでまっすぐに生きてこれた。
大したもんだ。でも、これからは、
俺にゆりちゃんを守らせて
もらえないか?」

ゆりえは千隼の言葉に息を止めた。

千隼を諦めるために自分の身の上を
話したのだ。

反対にこんなふうに言われるなんて
思いもしなかった。

フウ~と大きく息を吐くと

「千隼さん、何言ってるんですか?
自分の立場を考えてみてください。
私なんかと関わりあってる暇はない
でしょう?
それとも変わった境遇の女だから
物珍しいんですか?」

と思わず千隼を非難するような言い方に
なってしまった。

ゆりえは千隼の言葉が信じられず、なぜだか
少し苛ついてしまったのだ。