御曹司は優しい 音色に溶かされる

千隼は思わずゆりえを見つめた。

かっこいいと思ってくれていると知って
素直にうれしかった

実際プライベートでは、ドイツ車の二ドアの
青い車に乗っているのだ。

赤ではないだけの違いだ。

案外読まれているなと千隼はゆりえの
観察眼には恐れ入った。

ゆりえの住む家は郊外の純和風の戸建てで
ゆりえの雰囲気にぴったりだと思った。

ホテルから車で三十分位の場所になる。

家につくとゆりえはさっさと車から降りて
千隼にお礼を言おうと思い振り返ると、
運転席には誰もいなくて千隼はゆりえの
横に立っていた。

「ゆりちゃん、ご家族にご挨拶だけさせて、
夜遅いけど電気ついてるから、ご家族の
どなたかは起きてるんだろう?」

そう言うと千隼は玄関に向かって歩き出した

千隼とは休日にデートはしたことはないが、
この一~二ヵ月、毎週必ず一度はゆりえの
ステージに合わせてバーに来てくれている。

先日は休日にどこか行こうと誘われてもいた。

これ以上千隼に心を奪われて傷つくより
ゆりえの境遇をしっかり話したほうがいい
気がしていた。

そして、バーのバイトも辞めたほうがいい
だろうとここ数日ひそかに思っていたのだ。

ゆりえは覚悟を決めて

「分かりました。
千隼さんどうぞ上がって下さい。
家には誰もいないんです。私はここで一人で
暮しているんです。
用心のためにタイマーで電気がつくように
しているので、電気がついているだけです」