御曹司は優しい 音色に溶かされる

久美子が帰った後、ゆりえは千隼の
マンションに移った。

この家はこのままにしていつかピアノ
教室をやろうと思っている。

マンションでゆりえと千隼は新婚の時に
戻ったように仲睦まじく過ごした。

心が離れていたと思っていた辛い時期を
取り返すように二人は二人の時間を
慈しみ心から楽しんだ。

今日は翔太の三回忌の法事でゆりえは
急遽買った黒のワンピースを着て千隼と
一緒に西條の家に向かっていた。

ゆりえは義母には可愛がってもらったのに
彼女が辛い時に何も出来ず黙ってボストン
に行ってしまった事を悔いていた。

千隼はそれは自分の所為なんだからゆりえが
気にする必要はないと言ってくれたが、
西條の家に行って義母と顔を合わせると
思わず涙が溢れて

「お義母さんごめんなさい」

と言って抱き着いた。

「何言ってるの。謝るのはこっちの方よ。
千隼が辛い目に合わせて本当に
ごめんなさいね。
あの時は私達も余裕がなくてゆりちゃんの
気持ちまで考えてあげられなかった。
本当にごめんなさい。
でもこうして二人で来てくれたって事は
いい意味に受け取っていいのよね?」

そう言ってゆりえの手を大切そうに両手で
包み込んでくれた。