御曹司は優しい 音色に溶かされる

マンションに戻り着替えをするからと
ゆりえを連れてチルアウトを後にした。

ゆりえは懐かしいマンションに入ると、
あちこちきょろきょろと見回していた。
ゆりえが出て行った時と何も変わっては
いなかった。

沢山料理を作ったキッチンも記憶の中に
ある通りの配置だった。

調味料入れの中の調味料も何一つ
変わっていなかった。

使っていたフライパンや鍋もきちんと
同じところにしまってある。

ゆりえが出て行ったあの頃のままだ。

その時リビングに何か大きなものが
置かれているのが目に入った。

そちらに目を向けると、祖父母の
買ってくれたグランドピアノが置かれていた
場所に、美しい木目模様のブラウンの重厚な
グランドピアノがあった

ゆりえは思わずピアノに走り寄って
そっと蓋を開けた。

そこにはベーゼンドルフアーと独特の金色の
書体で名が書かれてあった。

ゆりえはびっくりして息ができない
ほどだった。

これは何?どうしてベーゼンドルフアーの
ピアノがあるの?

新品なら一千万は下らない。

世界三大ピアノと言われるメーカーの一つだ

ゆりえは震える手でフェルトカバーを外して
鍵盤にそっと触れてみた。