御曹司は優しい 音色に溶かされる

「そうなの。もう三回忌なのね。
翔太さんのお参りもしたいわ。
お墓にも行きたいと思ってるんだけど…
でも予定では木曜日に帰ることに
なってるから、変更できるなら私だけ
遅れて帰れるかジョシュに相談してみる」

「なんでジョシュに?」

と不機嫌そうな千隼の低い声

「だって、今回は出張っていうことで
エアーも取ってもらったの。
帰ったらすぐに映画のファイナルカットが
あってそれには参加しないといけないから、
あとの曲作りはとりあえずこっちでも
できるけれど…」

ファイナルカットとは映画の編集の最終の
確認作業と言える。

映像、アフレコ、音楽すべてを最終チェック
して映画が配給される。

出演者たちのクランクアップ後半年から
一年位経てからの配給になるのが普通だ。

ゆりえは自分がもう日本に、
千隼のもとに帰るのを前提として
話しているのを実感してしまい、
戸惑っている。

「とにかく、三回忌法要の件は少し待って
今日帰ってジョシュにお願いしてみるから」

そう言うとゆりえはカクテルを飲み干した。

千隼は不本意ながらゆりえに同意した。