御曹司は優しい 音色に溶かされる

千隼がニューヨークまで観に来ていたとは
知らなかった。

あの時は無理やり舞台に上げられてゆりえは
緊張でほとんど何も覚えていない。

その後のパーテイでもみんなにワインや
シャンパンを飲まされて酔っぱらってしまい
次の日は二日酔いで散々だった事しか
覚えていないのだ。

「そうなんだ。ありがとう千隼さん。
そんなに褒めてもらえてうれしい。
もしかしてロスのビバリーヒルズの邸宅での
セッションも聞いてくれた?
あの時千隼さんを見た気がしたの目が合った
ような一瞬だったけど…」

「うん、目が合ったよね。
まずいと思ってすぐに隠れたけれど、
全部聞いたよ。
タイタニックのテーマはすごくよかった。
思わず前に出てしまったんだ。
人脈を総動員して招待状を入手した甲斐が
あったよ。
その後往年の歌手の飛び入りがあったね。
リーの演奏で彼女の歌まで聞けて得した
気分だった。
その時も一泊しかできなくてトンボ帰り
だったけどね。
疲れなんか吹っ飛んだよ。
本当にリーは二年間努力して頑張ったね。
強くて美しい女性になったよ」

ゆりえは千隼に認めてもらえたことが
何よりうれしかった。
ジョシュも聞きたいと言うのでミュージカル
のテーマ曲を演奏した。

その後も今関わっている映画のテーマ曲も
千隼に聞いてもらって、一時間ほどピアノを
弾いていた。

二年ぶりのピアノなのに千隼がきちんと
調律を頼んでくれていたおかげで、音の
狂いもなく気持ちよく弾くことができた。