御曹司は優しい 音色に溶かされる

そのバスが山間の道路で対向車をよけ損ねて
谷底に転落した。

当時大きく報道された事故だった。

二人とも即死だったのが不幸中の幸いと思う
しかなくて、苦しまなかったことだけは
よかったと思えたのだった。

ゆりえは一八歳にして天涯孤独の身の上に
なった。

祖父母宅の二つの小さな仏壇には父と母
そして祖父母の四つの位牌が並んでいる。

小学校からの親友の西本早苗がいなかったら、
ゆりえはその後やりすごせていけなかった。

彼女は長野県まで、祖父母の遺体を引き取りに
行くゆりえに付き添い手続きや手配まで一八歳
の女の子二人で何とかやりこなしたのだ。

バス会社の人も平身低頭謝罪をしてくれて
ゆりえの境遇に申し訳ないと涙してくれた。

彼らの手助けもあり、ゆりえは比較的早く
祖父母を自宅に連れ帰ることができた。

賠償金や祖父母の生命保険、財産もかなり
あってゆりえが生涯生活に困ることはない
だろう金額が、残された。

母も一人っ子でゆりえは祖父母の籍に
入っていたのですべてゆりえが相続できた。

何もわからないゆりえに、親友の早苗の
父親が弁護士を紹介してくれた。

早苗の父親は裁判官だったのだ。

とても温和で優しい人だ。

今でも早苗の家に行くと父親みたいに
ゆりえを心配してくれる。