御曹司は優しい 音色に溶かされる

今日は眠れそうにないと思っていたのだが、
体と頭の疲れでゆりえは朝までぐっすりと
寝てしまった。

次の日、ジョシュは朝食の時間にも起きて
こなかったので、千隼と二人で和朝食を
食べた。

久しぶりにお味噌汁とごはんに鮭を焼いて
だし巻き卵と、ほうれん草があったので
おひたしにした。

ザ・和食というおかずのラインナップだが、
千隼は美味しいと言って感無量の
顔をしていた。

二人で暮していた時の定番の朝食なのだ。

そんなことも思い出すと何か居心地が悪くて
ゆりえはさっさと食べて千隼を送り
出そうとした。

玄関でリーと優しく呟いてそっと
抱きしめられた。

千隼の懐かしい匂いにゆりえは
泣きそうになった。

まだ千隼を忘れられてはいないのを
思い知らされた。

コロンは変えていなかったようだ。

千隼自身の匂いと混ざり合ってゆりえの
大好きな千隼独特の匂いがするのだ。

それだけで胸がきゅんと痛む。

千隼はなかなかゆりえを離そうと
しなかったが、ゆりえは千隼の背中に
手を回すことはできなかった。

まだ自分の心を決めかねていたのだ。

千隼は行きたくないと言っていつまでも
玄関でぐずぐずしていた。

今晩は早く帰るので三人で食事にでも
行くかと言われたのだが、冷蔵庫に
たっぷりの食材を用意して
くれていたのは千隼だ。

せっかくの食材を無駄にしたくはないし、
特に予定もないのでゆりえが作ると言うと
嬉しそうに、そうかといって名残惜しそうに
迎えの車に乗って仕事に出かけて行った。