御曹司は優しい 音色に溶かされる

「千隼さん、無理よ。
もうあんな思いは二度としたくないの。
愛する人が居なくなってしまう恐怖を、
何度味わえばいいのか…
だから二度ともう誰も愛さないと決めたの。
ボストンの二年間で私は強くなったわ。
千隼さんのいない時間をちゃんと
過ごせたのよ。
久美子やジョシュのお陰で千隼さんの事を
少しづつ少しづつ過去にできたのよ。
今では自分でお金を稼ぐことも
できるようになったわ。
もう、千隼さんに頼って甘えて守られて
ばかりだったゆりえじゃないのよ。
あの時の出来事は千隼さんにとっては誤解で
済むことかもしれないけど、私が流した涙は
本物で私が感じた絶望も心の痛みも本物よ。
私が経験したことよ。
二年前には戻れないのよ。
あの苦しみを無かったことにはできない」

千隼は呆然とした。

何の根拠があってゆりえは分かってくれる。
自分のもとに帰ってきてくれると思ったのか
自分の傲慢な考えに打ちのめされた。

もうゆりえは大学出たての守ってやらないと
何もできない女の子ではない。

辛い過去に打ち勝って、今はしっかりと
自分の足で立っている聡明で能力のある
女性なのだ。