御曹司は優しい 音色に溶かされる

久美子は日本に帰っていった。

今は東京を諸点にしてジャズヴァイオリン
の奏者として小さな会場でコンサートを
開いたり、頼まれて教室でヴァイオリンを
教えたりしている。

少し有名なジャズバンドからの勧誘もあって
それが決まれば、もっと活躍の場は
広がるだろう。

ジョシュも久美子もちゃんと地に足をつけて
頑張っている。

ゆりえだけがどこか落ち着かずふわふわと
漂っているように感じている。

ちょっと情緒不安定気味だ。

最近隣に屈強な男の人が引っ越してきた。

スーパーやショッピングモールでも時々
ばったり会ったりする。

どんな仕事をしているんだろう。

不思議な人なのだ。

でも、マンションの前で会えば、ゆりえの
荷物を持ってくれたりこないだは、
十代の男の子数人に絡まれている所を
助けてくれた。

でも、ゆりえの生活圏内には入って
こようとはしない。

とてもやさしい紳士的な男性なのでそんな
人が隣家にいることで安心感があって
助かっている。

ゆりえはそんな親切のお礼に時々和食を
差し入れている。

ここでの生活はジョシュや久美子がいない
分静かだが、それゆえ寂しい。

だから和食をもって言って食べてもらえる
ご近所さんがいてちょっと嬉しいゆりえだ。

とにかく九月までにできるだけ仕事は済ませて
少しゆっくり日本に居られるようにしたいと
思い直してゆりえはピアノに向きあった。