「――聞けば、数々の奇跡を起こしているんですって?」


 ラブたちの雰囲気に困惑しつつ、ステラがそうたずねてくる。


「え〜〜違いますよ。全部気のせいですって。ね、リアム様」

「…………」


 気のせい――と言われてしまえば気のせいのような、はたまたそうではないような。少なくとも、現段階で「そうです」と触れ回るのはためらわれる。リアムが返答に困っていると、ステラはフンと鼻を鳴らした。


「そう……それならいいけど、覚えておいて。本物の聖女はこのわたくしよ。あなたじゃないの」

「なるほど! ステラ様が本物の聖女なのですね! わかりました! リアム様も、わかりました?」

「いや、俺に振られても……」


 首を傾げるリアムに、ステラは不機嫌そうに踵を返した。


「なんだ、ちゃんと適任者がいるんじゃないですか。ステラ様ってたしか、一番聖女に近いって噂の人でしょう? いろいろと奇跡を起こしているって」

「……それこそ『気のせい』で済ませられる内容ですよ」


 中身はどれもラブが起こした奇跡に近いが、質が違いすぎている。リアムは小さくため息をついた。


「でもでも、少なくともわたしみたいに『聖女じゃない』なんて言わないし、やる気に満ちあふれているじゃないですか?」

「まあ、それはたしかに」


 聖女が聖女である証明など誰にもできない。だったら、自覚とやる気のある人間が就任したほうがいい――一理ある。もちろん、それが国のためになるかはわからないが。