それから数日後、フィオナはジョルヴィア公爵家を訪れた。


(さすが、立派なお屋敷ね……)


 実家の子爵家とも、夫と暮らした家とも違う、格式高く美しい建物。自然と背筋の伸びるような凛とした空気に、フィオナはゴクリと息を呑んだ。


「ようこそ、お待ちしておりました」


 使用人頭に連れられて、フィオナは早速屋敷の中に入る。それから、一通り邸内を見て回った後、早速公子の元へ案内された。


「こちらがアシェル様のご長男、ダニエル様です」

「まあ……!」


 ベビーベッドの中にいたのは、世にもかわいい赤ん坊だった。
 色素の薄い金の短髪に、宝石みたいにキラキラした大きくて丸い青の瞳。真っ白な肌に薔薇色の頬。ダニエルはふっくらと肉づいた腕や足をバタつかせながら、こちらをじっと見つめている。天使もかくや、という愛らしさだ。


「なんてかわいいの……!」


 苦しくてたまらなかった胸が、じわりと温かくなる。思わず身を乗り出したフィオナの頬に、ダニエルがふにふにと手を伸ばした。