「な、ナターシャ様は? あんなに頑張ってて……さっきだって最上位に選ばれてすごく喜んでいたのに」

「儀式の最上位者を妃に選ばなければならないなんてルールはない。慣例はあくまで慣例。それに従う必要なんてないよ」

「だけど、彼女はあなたの妃になりたがっていたし」

「最初はね。けれど、俺の君への想いを知って協力すると言ってくれた。他の候補者たちもみんな納得してくれている。クラウディアは他の候補者たちと明らかにレベルが違っていたし、みんなのことを助けてくれた。候補者たちと穏やかな関係を築いてくれた。だから、俺の選択に異を唱えるものはいなかったんだよ」


 ユリウス様が私のことを抱きしめる。とても強く、優しく。空っぽだった私が、温かいもので満たされていく感覚がした。


「私は――あなたと一緒にいたいです」

「うん」

「お母様は関係なく、私自身がそうしたいと思うから」

「うん」


 ユリウス様が微笑む。彼は穏やかに目を細め、私の手をぎゅっと握る。


「クラウディアの人生はクラウディアだけのものだよ」


 たとえどんな道を選択しようとも。
 ユリウス様の言葉に、私は満面の笑みを浮かべたのだった。