「似てるって? 一体どこが……」

「誰かに決められたとおりに生きてきたところ。そんな自分を変えたいところ。気が強いところ。優秀なところ。孤独を感じているところ。誰かに、なにかに救いを求めているところ」


 気づいたら、私はユリウス様の腕の中にいた。ふわりと香るシトラスの香り。私は首を横に振った。


「全然、似てませんよ」


 私はユリウス様とは違う。母への恨みつらみばかりが詰まった中身のない人間なんだもの。さっきだって、お妃選びが終わったあとの自分の身の振り方をまったく思いつかなかったし。ユリウス様には彼との結婚を切望する女性が九人もいるのだし。


「ねえ……もしも俺が王太子じゃなかったら、クラウディアは結婚を受け入れてくれた?」

「え?」


 一体なんてことを聞いてくるんだろう? 私は言葉を失ってしまう。


「たとえば俺が第二王子だったら?」

「待ってよ。そんなの、考えたこともない……」

「だから『考えて』って言ってるんだよ」


 ユリウス様の唇が頬を撫でる。胸がドキドキして、体全体がものすごく熱い。こんな状態でまともに考えられるはずがない。


「ご自分だって私のこと『気になってはいると思う』っておっしゃっていたじゃありませんか」


 いきなり結婚とか、もしもの話をされても、まったく理解が追いつかないのに。


「……話しているうちに気づくこともあるだろう?」


 ユリウス様はそう言って、私の頭をそっと撫でる。それから「おやすみ」と言って、私の部屋から出ていった。