「レニャが?」

「はい。事情が事情なので、ヘラー様なら必ずレニャ様の力になるだろうと。……勝手なことをしてすみません」

「いや、勝手なことだなんて思わないけど……」


 事情を聞きながら、ヘラーは困惑した表情で小さく首を傾げている。


「けれど、アデリナはそれでいいの?」

「え?」


 どうしてそんなことを聞くのだろう? アデリナの胸が痛くなる。


「もちろん。私は……ヘラー様が望むならそれで」


 嘘だ。本当は嫌で嫌でたまらなかった。

 もしもヘラーがレニャを再び愛したら――アデリナは不要になってしまう。離婚をした女性が、再婚することは簡単ではない。となれば、レニャの父親だって今度はヘラーとの結婚を認めるかもしれない。


(ヘラー様が私を愛しているのは『私が彼の妻だから』)


 その前提がくつがえってしまえば話は変わる。
 彼が本当に愛している人を妻にできる絶好のチャンスができた。もちろん、アデリナとヘラーが離婚をするのが先だけれど……。